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11月7日の奇跡|千葉ロッテマリーンズ日本一によせて

今シーズン始まる前から漠然と、
俺の誕生日まで野球見れたらいいな、って思っていた。
誕生日の11月7日は日本シリーズの期間と重なる場合が多い。応援しているロッテが日本シリーズの舞台に立ち、俺の誕生日で日本一が決まったらどんなにいいことだろうかと夢物語を描いていた。

こんなに夢中になれるとは思わなかった。
負けた日は何も手につかず家の雰囲気は険悪になり、勝った日は何もかもがはかどる。生活のリズムを考えると決して良い傾向とは言えない。
そんな俺をどうにか理解しようと18時からテレビを独占させてくれた嫁も、いつしかコアなロッテファンになり、息子用の小さいユニフォームが一枚増え、選手の写真が印刷されたカレンダーが部屋を飾り、日を追う毎に日常がロッテに気持ちよく浸食されていく。
幸せだな、筋金入りだな
揶揄にも似た表現で身内や友人は俺を茶化した。その言葉は好意も悪意も含んでいたと思うが、俺には心地よかった。

2010年11月7日。
昼から夕方にかけて草野球の試合をした。
一打席目は積極的な今江の気持ちでバットを振るものの、初球を投ゴロ。二打席目は好調時のテギュンのように豪快なスイングをしてやろうと、思いっきり振った。バットの先だったが左中間に飛んで二塁打。
満塁で回って来た最後の打席、今年のロッテの打者全員の気持ちでセンターから逆方向につなぎのバッティングでタイムリー。
もちろんこんなことを考えていたわけではない。
全てあとづけだ。
試合には負けて守備ではエラーもたくさんしてボロボロだったが、妙な爽快感があった。
あと1時間で日本シリーズ第7戦が始まる。
ソワソワした気持ちを隠しながら家に向かった。

誕生日の祝いにと、嫁が焼肉をご馳走してくれた。
焼肉屋にはテレビが無かったので、中継は見れない。嫁もそれを気にして、俺に携帯で途中経過を見るよう促す。
試合開始から1時間が経っていた。マリーンズ公式サイトにアクセスすると、トップページには「3回裏 ロ2:6中」の情報が。
せっかく嫁がご馳走してくれる焼肉がまずくなってはいけないので、携帯はもう見ないことにした。嫁はしきりに「絶対ロッテが逆転する」と言ってきかない。
「誕生日にロッテが勝つといいね」
というメールがこの日だけで何件も携帯に届いていた。みんなが頭の中でロッテの快進撃と俺を結びつけてくれている。これだけで十分すぎるプレゼントだ。
だからかどうかはわからないけど、勝っても負けても、最後の局面までロッテが試合をしてくれている喜びを素直にかみしめようと、シーズン中ではあり得ないほどの余裕を己に感じていた。

実家に預けていた息子と娘を迎えに行く。
到着と同時にロッテが6-6の同点に追いつき、ほどなく6-7と逆転。胸の内で爆発しそうな昂りを必死に抑えながら試合を見守っていると、「ロッテの優勝をアボジがプレゼントしてやる」と親父が上手い具合に便乗してきた。
しかしそうすんなりはいかず、9回裏同点に追いつかれる。さすが和田だよな。
努めて冷静を装う俺に対して、その場にいる皆が気を使い始めたのがわかったので、子供たちを連れて自宅に戻ることにした。

帰り道の車中では、いろんな思いが去来した。
野球が俺の人生を救ってくれたわけでもない。俺に金をくれるわけでもない。
なのに何で俺は「たかが野球」にすがらなきゃ生きて行けないんだろう。
同様にロッテを応援している全国のファンたちは、なぜあそこまで声を枯らすんだろう。対戦相手の中日ファンも然りだ。
いろいろ考えてわかったことが一つあった。
人は闘いたい。
闘って勝利したい。
血や痛みを伴う無意味な諍いでなく、
仕事や生活の困難に打ち勝ち人生の勝利者になりたい。
そんな気持ちを投影して満たすには、勝敗が明確に表れるスポーツが最も効果的な媒体なのかな。そして俺はそれが千葉ロッテマリーンズだったのだ。マリーンズのユニフォームを着て、野球場を縦横無尽に駆け抜ける選手たちに、自分の思いを重ねている。

自宅に戻ってテレビを付けた。
試合は岡田の感動的なタイムリーを経て、12回裏に突入。
11月7日の午後11時7分に最後のアウトが宣告されたとき、自分でも信じられないぐらいの量の涙が溢れた。嗚咽が漏れた。それを見て嫁が傍らで笑った。
どういう気持ちで涙を流したのか、説明できないような感情だ。
喜びや安堵という率直な感情ではない。
2年前の30才になる誕生日、嫁が連れて行ってくれた鳥取旅行で登った大山。
初めての本格登山で体をガクガクいわせ、寒さにふるえ、カチコチになったおにぎりを頬張って辿り着いた山頂の風景。ガスだらけで何も見えなかったけど、確かに一番高いところに辿り着いたという、体で感じる充実感。あとで考えたらそのときに気持ちにものすごく似ていた。
しばらくの間、胴上げを心ここにあらずの状態で眺めながら、ああ、こんなにもロッテは俺の心を支配していたんだな、と改めて思った。
そしてその瞬間鳴り止まぬ俺の携帯。
俺は何一つ成し遂げていない。
なのに祝福してくれる人たち。
間違いない、俺はロッテに人生を救われている。

俺の32才の誕生日に最高のプレゼントをくれた千葉ロッテマリーンズ。
応援する意味を教えてくれてありがとう。
生活に彩りを与えてくれて、本当にありがとう。

  • 中野区

    おまえ、こんな綺麗にまとめたら、誰もコメント出来ないぞ?

  • 中野区

    でもホントロッテすげーよ。おめでと。

  • mugisorahiko

    でもホントロッテすげーよな。ありがと。
    野球最高。